進路指導部長の会議 |
ということで、先週の土曜日に静岡県内10校の進路指導部の首脳陣が集まる会議があり、末席ながら参加してきた。ワタシは進路指導部長ではないが、各校2人までは出席Okということになっている。もちろん、某F高時代にも参加の経験があり、その当時は周りの出席者に較べて異様に若かったので相当萎縮していたが、そろそろ「ものを言ってもいい世代」になったので、かなり発言させてもらった。
この会の目的は、静岡県内高校生の進学率を少しでも向上させることであり、学力をほんの少しでもアップさせることにある。今回は第1回の定例会なので、今春の大学入試に関しての各校の総括からはじまった。主な数字は「現役国公立進学者数」「現役&浪人の合計国公立進学者数」「東大京大医学部の進学者数」「旧帝大など難関国公立進学者数」である。
ここで、「私立大学は?????」という疑問がでるかもしれない。親御さんとの面談でも、「私立大学に関する進学指導はあまりやってくれない」という批判をうけることもよくある。しかし、我々は、県立高校の教師であって、塾の経営者ではない。私立大学は、3教科とか4教科とか、試験科目を削っている大学であるから、色々な教科を万遍なく多岐にわたって教えようとする「高校教育(ジェネラリスト教育)」に最初から馴染まない。ちゃんと5教科7科目を課する国公立の方を偏重するのは当たり前だ。
さて、ここからが本題。
その今春の受験総括は、1校ずつ反省と成果をふまえて自校の状況を発表していくのだが、某●●高校の進路部長の発言あたりから、なんとなく発言の方向が変わっていった。その先生の趣旨はこんな感じである。
「ワタシの高校は、第一志望を貫く指導をモットーに現役で合格出来なければ浪人してもそこを目指せと教えている。だから浪人が多い」
「そこで、1年前の現役生の合格数と、今春の浪人生の合格者数を足し算している、これが、その世代の生徒の実力である。」
「その数値で言えば、ここ2、3年は、過去20年間でもトップの数値である。」
「したがって我が校は凄い」
そして、この発言以来、話題は「現役&浪人の数値」に中心が移った。
ちょっと待ってくれ。この会合は、各校の進路指導部長の集まりである。そこで、浪人生の頑張りを賞賛して、それを含めて「学校の力」というのは、どう考えても詭弁である。校長先生が自分の学校の様子を話している場ではないのだ。その進学校の進路系の人物が、「浪人が頑張った」と発言することは、学校の指導力がない(現役では降格させることが出来ない)という実際を図らずも暴露しているに等しい。高校3年間で、彼ら現役高校生のポテンシャルを伸ばしきれなかった。と言っているだけである。こういうのを恥ずかしい現状認識というのではなかろうか?
進路指導部の本来の目的は、「現役合格」にある。もちろん、「その生徒が現役で合格できる受験を進める」ことも大切だが、「高いポテンシャルを持った生徒を現役で第一志望に合格させる」ことはもっと大切だ。それが、その高校の教育力なのだから。
その会合に参加した方々は、高校教育で30年程度のキャリアがある人ばかりである。だいたい30年もやっていれば、生徒がどれくらいの学力(ここでは合格力に限定)を持っているかは、1.2年生の時に教えていてある程度わかる。
あっこの子は東大、この子は東大は無理だが次のランクではOkとか、あっこの子は頑張って国公立・・・・とか。だから、進路指導部の理想は、「5人受験で5人合格」や「医学部希望者10名で合格者10名」というパーフェクトゲームであって、
その理想がちょっとくずれて、「東大5人受験で3人合格で2人浪人、しかし1年後にこの2人は合格」となるのならば、浪人も奨励出来る。
それを、東大15人受験して2人合格とか、東北大学80人受験して20人合格(これは、東北地方にある某高校の実際の数値)という状況は、進路指導部として恥ずかしいではないか。
もちろん、その高校生や親の意向もあるだろうから東大を目指して1浪も2浪も3浪も構わないという生徒は、例外である。しかしながら、長く生徒を見ていると、
「俺は東大受験して(残念ながらあと少しで)落ちたから、しかたなく●●大学にいる」という結果を自慢にしてそれからの人生を過ごしていく奴も多い。本当なら●●大学が適当な実力しかなくても、こんな肩書きだけは欲しいという根性の奴が本当にいる。
センター試験の自己採点結果から、「大阪大学ならば合格率50%、東大ならば合格率20%でしょう。さあどうします?」という選択を迫られた時、東大受験を決める生徒の中には、「五分五分の勝負はイヤ・・・・本当に自分が試されるから」「ならば、ほぼ不合格が決まっている大学を受験した方が気が楽」という本音を隠し持っている奴の方が実は多いのである。
これは人生としてずるいやり方ではないか?
ワタシは、現役合格を最優先とする某F高校に12年間もいた。だからではないが、現役合格こそ進路指導であるとする意見である。上に書いたのは、その理論だ。そして、進学校で教える教員ならば、現役合格を達成できる、「授業力」と「作問能力」「課外授業マネージメント能力」を身につけるできだし、「生徒の意識づけ」を指導出来る教員になるべきだ。
生徒に「逃げてはいけない」と教えるならば、先生も「逃げてはいけない」。
ということを、会議中に思いついて、考えれば考えるほど、「現役&浪人」発言に怒りを覚えたが、やはり、本性が“小心者”であるワタシは、このことを会議の席上で発言できず、こうやって一人、パソコン上のイニシャルトークで鬱憤をはらすしか出来ないのである。
まあ、考え違い氏がいることで、自分の学校に有利なることも間違いではないから、もうこれ以上は書かない。