衆議院選挙のお勉強 |
どうやら、本当に衆議院解散→総選挙になるらしい。
産経新聞の記事では、もはや断定的である。
<貼り付け始め>
安倍晋三首相が年内の衆院解散を決断した。
来年は、統一地方選や集団的自衛権の行使容認に絡む安全保障法制関連法案の審議など、政権運営に影響しかねない政治日程が立て込む。公明党も統一選や関連法案の審議に近い時期の衆院選を嫌がっていた。野党が「政治とカネ」をめぐる閣僚のスキャンダル追及を緩めないことも首相の闘争心に火を付け、早期解散の引き金になったといえる。「解散は首相の専権事項だ。判断はお任せしたい」 公明党の井上義久幹事長は12日、都内で自民党の谷垣禎一幹事長らと会談し、衆院解散に関し首相の判断に従う考えを示した。
<貼り付け終わり>
首相の闘争心に火がついたのだそうだ。11月の終わりから、政治家は「リアル」な活動に突入する。政治家は“勝たなければいけない”のであって、負けると肩書きがなくなる。
しかし、この選挙というものの意味を、日本人は案外わかっていない。その原因の一端は学校教育にある。日本人が初めて選挙を疑似体験するのは、小学校の児童会とか中学校の生徒会とかの選挙である。この頃の小中学校はどうか判らないが、候補者が出なくて信任投票で決まる方が多いと思う。今時の小中学生が、「生徒会活動」に熱心だとは思えない。もちろん、高校も同様で、生徒会長の選挙が行われることなどほとんどないだろう。
候補者が出ないから、信任投票だから、学校での疑似選挙体験が悪いと言っているのではない。
生徒会長選挙と政治界の選挙は、「任期が自動的に終わるか否か」で決定的に違う。学校の疑似選挙体験は学年が進行してしまうため、“自動的に任期が切れる”のに対し、国政選挙などは、当選し続ければ何時までも出来るのである。
だから、学校での選挙は自動的に“選ぶ”が選挙民の仕事になるが、国政選挙では、“落とすこと”が仕事である。
近代市民政治というのは、為政者を引きずり下ろすことによって成し遂げられた。したがって、近代市民政治の初期段階では“非合法な手段”が使われた。これを革命という。そして、この革命をなるべく平和に終わらせたいという願いが“選挙”を作り上げたのである。だからこそ選挙の意味は引きづり降ろすことなのだ。
また、近代民主政治発祥の地イギリスでは、小選挙区制によってすべての下院議員が決められる。日本も、衆議院の300が小選挙区であって、比例代表制がおまけのようについてくるのだ。しかしながら、この比例代表制は、「死票が多い」「得票率と議席数が合わない」などなど、様々な欠陥がある。一票の格差が存在してしまうことも、大きな欠陥の一つである。選挙を数学的にもっとも正しく運用するならば、現在の参議院の比例代表区で行われている。非拘束名簿式比例代表制が一番正しい。しかしながら、伝統的に小選挙区制度が用いられた(日本では導入された)理由は、“一番政権交代が起きやすい”からだ。小選挙区制度の元では、現役の総理大臣といえども、一回の選挙で一気に“ただの人”になってしまう可能性がある。だから小選挙区制なのである。
ここでも、“選挙”というのは、引きずり下ろすことを目的としていることが理解できる。
選挙が「引きずり降ろすことを目的」として考えると、日本で一番ダメダメな選挙は県議会選挙である。あとは宿題として、なぜ、県議会選挙の仕組みが一番ダメダメなのかを考えてください。ところが、地方自治政治の中で、県議会選挙を何とかしろという声はほとんど聞かない。近年、県知事選挙は、「多選化」とか「相乗り」とか「原発」とか「沖縄基地」とかでかなり注目されている。政治システム上は、県知事と政策に対してチェック&バランス(抑制と均衡)の機能を果たさねばならないのは、「地方議会」であるのだが、その地方議会は、都府県議会においてほとんど機能しない。この理由も、
都府県議会の仕組みがダメダメの欠点だらけの非数学的な選挙であるからである。ここを改善しないと(日本人が認識しないと)日本の地方政治は前進しない。
さて、今回の衆議院選挙から、衆議院の定数が変わる。
<貼り付け>
次期衆院選は「1票の格差」是正のため、小選挙区を「0増5減」する新たな区割りが適用になる。福井、山梨、徳島、高知、佐賀5県の選挙区をそれぞれ3から2に減らし、衆院小選挙区の総定数を300から295とする。
与野党は格差が最大2.30倍だった2009年衆院選を「違憲状態」とした11年の最高裁判決を受けて12年11月、小選挙区の0増5減と、都道府県ごとに1議席ずつ割り振る「1人別枠方式」を廃止する関連法を成立させた。定数と区割りを見直す法改正は12年12月の衆院選に間に合わなかったため、12年衆院選の1票の格差は最大で2.43倍で2回連続の「違憲状態」だった。
0増5減により、10年の国勢調査に基づいて計算した最大格差は1.998倍とされた。その後の人口移動により、今年1月1日時点の住民基本台帳人口に基づく日本経済新聞社の試算では、人口が最も少ない宮城5区との格差が2倍以上となった衆院小選挙区は昨年より5多い14選挙区だった。人口の最も多い兵庫6区との格差は2.109倍となった。違憲判断の目安は2倍とされている。
<貼り付け終わり>ということで、この「一票の格差是正」も徐々にではあるが前進している。10年来、衆議院の一票の格差は、「3倍が目安」と教えてきた。ちなみに、参議院は6倍だそうだ。上記の判決のように、現在は「2倍以内」を目標にしている。この辺りが、裁判所の判断と政治判断の「決着」になりそうだ。
ということで、衆議院の議員定数のは475になった。これも新しい数字である。
さあ、国公立大学を目指す受験生諸君。この衆議院選挙で、今年のセンター試験「現代社会」と「政治経済」で、選挙関連の問題が出題されないことが決まった。センター試験はには「一年半前の法則」というのがあるのだ。