選挙制度の基本 |
今日は、真面目な授業です。テーマは「選挙制度」です。
「起立」 「礼」 「お願いしまーーーーす」。 「本音は、お願いします。起こさないで下さいダロ」
さて、皆さん、
選挙制度に関しての最高の書籍は
『統計で見た選挙の仕組み』 著 西平重樹 (ブルーパックス)
という本です。しかしながら、現在絶版になっており、容易に読むことはできません。1990年代の本なのですが、これ以上選挙に関してわかりやすく解説している本はいまだにありません。
ワタシは、この『統計で見た選挙の仕組み』を何回も読み直して、すべて頭に入れてあります。
昨年、衆議院総選挙があり、選挙結果に関して、「一票の格差 違憲判決」が出て、皆様も少しは興味が出ていたところかなと思います。
その1
さて、この選挙制度ですが、日本人1億2千万人が、全く理解できていません。その基本的無理解は、日本語の翻訳間違えにあります。
日本人は、小選挙区制と大選挙区制を、面積が大きいor小さいと勘違いしてませんか? だから、1994年に衆議院選挙制度改革まで、その中間的存在として、中選挙区制度があったと覚えているでしょう。これが、そもそもの大間違いです。まあ、順番に問い詰めればしっかりと答えられます。
小選挙区制度=1選挙区から1名選出する制度です。
では、大選挙区制は、
大選挙区制=1選挙区から複数名選出する制度
となります。 ですから、中選挙区制という制度は存在しません。
これを英語で表すと、極めて単純に理解できます。 小選挙区制=シングルメンバー 大選挙区制=マルチメンバー。つまり、選挙区の違いは、シングルorマルチしかないのです。決して小がスモールであり、大がビッグであるのではありません。
数学的正確さを求めて、日本語にするならば、単選挙区制と複選挙区制とでもしなければ間違いなのです。、今から140年前の明治初旬の方々が、思わず間違えて使ってしまった誤訳を、何の疑問も持たずに用いてしまった日本人の大きな誤りです。さもなければ、中選挙区制などと言葉が登場するわけがありません。
その2
では、小選挙区と大選挙区の比較に入ります。
例えば、 有権者20万人で、定数5の議会を作ると仮定します。
小選挙区制度の考え方では、有権者20万人を5つの選挙区に分け、そこから、一人を選出します。この選挙区の区割りがアンバランスになることを「一票の格差」と一般的に定義しますが、仮定の話として、完璧な区割り、
つまり、1選挙区の有権者は4万人とします。
大選挙区制というのは、有権者20万人の地域を、一つの選挙区してそこから5人を選出する方法です。地方議会で一般的に行われていますからご存じでしょう。
ところが、ここに大きな間違いがすでに発生しています。単純に、小選挙区では4万人の選挙区から1名選出し、大選挙区からは、20万人の中から5名選出するのだから、「一票の価値」は、同じ、4万分の1だと思っては大間違いなのです。(ここ、全く日本人は気づいていない)
小選挙区は、4万人の有権者の中の一票ですから、「1票の価値」は4万分の一です。しかし、大選挙区では、20万人の有権者の中の一票ですから、「1票の価値」はあくまでも、20万分の1しかありません。
すでに、ここに、「1票の価値の格差」は5倍も生じているのです。
・・・・・・・・・理解してくれましたか?
では、大選挙区制を小選挙区制と同じ「1票の価値」にするためには、どうすれば良いでしょうか?・・・・とんち風ですが、数学です・・・・・
それは、大選挙区のような場合、1名の投票権を5票にすれば良いのです。そうすれば、有権者20万人が5票ずつ入れるので、「4万分の1」になります。
つまり、大選挙区制で投票するには、複数連記制にしないと、数学的に正確ではありません。残念ながら、この事実を指摘した人は、先ほどの新書の著者・西平重樹教授しかいません。
よく、小学校では、学級委員を2名選ぶことがありますが、この投票も一人2票入れないと不正確なのです。日本の先生の中でこのことに気づいている人もゼロです。
したがって、現在の日本の選挙制度の中で、最悪な選挙制度は「地方議会」の選挙と、参議院の選挙区制度とAKBの総選挙です。大選挙区単記制という大間違いな制度をずっと行っています。
特に最悪なのは、“参議院選挙区”でありまして、参議院選挙区は、都道府県を一つの単位として、当選者を1名~3名選出するという暴挙にでております。完全に選挙制度に関する無知をさらけ出しております。そもそも、1名選出するのと、2or3名選出するのでは、全く選挙制度から違うのです。
残念なながら、今週に行われた「参議院選挙の1票の格差訴訟」の判決、判決記事でも、この事実に触れたものはありませんでした。(あれば、誰か教えてください)
その3 小選挙区制度の最悪さ
その2で大選挙区の大間違いを指摘しましたが、では、小選挙区は正しいのか、と言われるとそうでもありません。むしろ、考えようによっては小選挙区はかなり危険な選挙制度です。(これを指摘する先生方はかなり存在しますが、ではなぜ採用されているのかを説明できません)
小選挙区の欠点は次の3点です。・・・・どれも大問題です。
1) 死票が多い。 Aさんが8万票、Bさんが7万票、Cさんが6万票(この数字はこれから何回も出てきます)。となった場合、B・Cさんに入れた票は死票と数えられます。・・・これは多い。
2) コンドルセのパラドックスが出現する可能性がある。 この「コンドルせのパラドックス」という数学的知見を、日本人は教わってません。大問題だと思います。
コンドルセのパラドックスを説明する前に、一つ、文句を言っておきます。日本では高校生に【現代社会】という科目を必修で教えます。そして、【現代社会】というのは、今の社会のことであるから今の社会における基本的知識を学習すればよいと考えられています。そして、高校生が全く興味を示さないことに関して、大人(先生を含む)は、「今時の高校生は、政治とか経済に全く興味を示さない。時事問題に弱い、けしからん」と嘆いたり怒ったりします。
ところが、今の高校生における時事問題とは、「次の時間に英語の小テストがある」とか「明日の数学の課題が終わらない」とか、「今日の部活のメニューは?」とか「今日の音楽配信は?」とかが、時事問題なのです。
それが、彼らにとっての【現代社会】なのです。
だから、【現代社会】を“今”として教えるならば、「英語を活用して教える」とか、「数学を活用して教える」という方向を見据えないとダメではないでしょうか? それが出来ないのならば、【現代社会】という名称をやめて、【大人の世界】くらいにしなさい。
さて、コンドルセのパラドックスです。この数学的知見は、かの前田敦子によって、(一流芸能人特有の)超感覚的に、日本人全体にメッセージされました。しかし、前田敦子のチョーカンカクを「あっ コンドルセのパラドックスだ」と見破った人はほとんどいませんでした。
3年前のAKB総選挙で、前田敦子が大島優子を破り1位となりました。あの時のインタビューで彼女は泣きながらこう述べています。「・・・・・前田敦子を嫌いになっても、AKBを嫌いにならないで下さい!!!!!・・・・」と
それはそうでしょう。正確な人数はしりませんが、AKB総選挙は、48人から一人を選ぶのです。 仮に、得票総数100万票であって、前田敦子が、25万票を獲得して1位となったとします。しかし、残りの75万票の投票者が、前田敦子を一番嫌いと思っているかもしれないのです。これを、小選挙区制の結果では証明できないことをコンドルセのパラドックスというのです。
ということで、指先が疲れましたので、この続きは次回。
このように、授業は途中で終わることがよくあります。
別に、ここでAKBを出演させる意義は全くないのですが、ワタシの授業は、有用性を大切にしますのですぐにこんな例題がでてしまうのです。
では、起立 礼
さよおなら。